技術職と管理職の狭間で
【はじめに】
初めまして、2023年8月にMNTSQ株式会社(モンテスキュー)に入社した中岡と申します。職種はSRE(Site Reliability Engineer)で、40代にして3度目の転職となります。
前職ではインフラチームのマネージャーとして管理職を務めていましたが、今回の転職で技術職へキャリアをシフトさせました。
この記事では、技術職から管理職へとキャリアを進めようとされている方や、キャリアの構築に悩んでいる方、ミドル層となって転職という選択肢を取るべきか悩んでいる方などに、同じように迷ってきた1人のインフラエンジニアの道をご紹介します。
私自身、キャリアを変えるタイミングが遅くて苦しんだ時期もあるため、この記事が皆様の参考になれば幸いです。
【私の経歴】
1社目:ネットワークエンジニア
新卒で中堅のSI会社に入社し、ネットワークエンジニアとして主に中小企業のインフラ更改、設計、構築を行ってきました。
ルータやスイッチ、Firewall、UTMなどの設計、設置がメインです(OSI参照モデルにおけるレイヤ1〜4の領域)。床下へのLANケーブル配線作業などの物理的な作業もよくやっていました。
この頃は直接お客様先へ訪問して打ち合わせしたり、作業をして作業報告書を書いたりと、お客様との接点が強い時期でした。もともと通信の仕組みやネットワークの分野が面白いと思っていたため、このままこの仕事を続けようと思っていました。
そんなある時、導入済みのお客様のシステムで障害が起き、調査に行きました。ネットワーク周りは正常なため、サーバ、ソフトウェアのいずれかに問題があるという判断になりました。この当時の組織は、サーバエンジニア、ソフトウェアエンジニアと部署が細かく分かれており、自分の担当する範囲の外は他のチームが見るという縦割り組織でした。
結果的に他のエンジニアが到着し、調査するまで障害の復旧に時間がかかってしまうことになり、お客様への業務影響が大きくなってしまいました。
この時の経験から、サーバを含めてもっと広くインフラ知識が無いとトラブルシューティングができないと感じ、1度目の転職をしました。
2社目:インフラエンジニア
2社目は社員数50名程度の小さなSES(System Engineering Service)の会社で、情報通信プロバイダ会社に特定派遣という形で常駐しました。
常駐先ではグループ会社のサービスを監視する監視システムの維持管理業務を行いつつ、同じ会社から派遣されたチームのリーダーとして、技術面、マネジメント面の両方で現場維持を任されました。小さなチームでしたが、管理業務を行う経験をしたのはこの時が初めてです。
システム監視を行うソフトウェアを稼働させるLinuxサーバの運用、VMWareによる仮想サーバの構築・運用など、自分が望んでいたサーバに関する経験を積むことができました。
また、インシデント管理や変更管理など、ITILをベースにしたシステム運用の基本についても業務の中で学ぶことができました。
このお客様先では大変お世話になり、ありがたいことに契約更新を毎年続けて、延べ10年間常駐していました(SESで10年は相当長い期間と思います)。
ただ、システムも安定稼働しており、それほど新しい機能が必要な業務ではなかったため、保守的、枯れた技術を使い続けるという環境で、私は次第に焦りを感じていました。
「このままでは他の環境で通用しない人材になってしまうのではないか?」と。
折しも、クラウドコンピューティングが台頭し、AWSやAzure、GoogleCloudといったクラウドサービスが普及してきた時期です。
クラウド技術を知らないままオンプレ環境の保守だけを続けていくと、自分のキャリアが狭まってしまう、何よりクラウド技術が面白そう、という気持ちが強くなりました。
そこで再び転職活動を始めました。
SESの仕事とオンプレの仕事が長かったこともあり、転職活動は難航しました。クラウド技術を使う業務については経験がないからと、書類選考や1次面接でお見送りとなることが続きました。SESの会社や、オンプレサーバの構築・運用中心のSI系の会社は比較的通りやすいものの、会社だけ変わって同じことの繰り返しになるので避けました。
最終的には複数の自社プロダクトを持ち、オンプレもクラウドも両方扱っているIT企業から内定をいただきました。
3社目:クラウドエンジニア
3社目の会社は、社長が起業し、ベンチャー気質を残しながら上場しているという、ユニークな会社でした。ここではクラウドに構築された自社IoTプラットフォームのサービス運用・保守に携わることになりました。
MicroServices、AutoScaling、Kubernetesといったクラウドネイティブ技術の一つ一つが未知の分野で、最初はひたすら勉強をしていました。とはいえ中途で入ったので業務もすぐに始まり、クラウド間でのデータ移行を行うプロジェクトの主担当に任命されましたが、使われている技術とその運用に全くついていけず、周りのメンバーに助けて貰いながら何とか進めていました。インフラ技術知識について、キャッチアップの遅れが致命的であると感じた瞬間でした。
Excelでの構成情報管理からTerraformでのIaC(Infrastructure as Code)へ
Word,PowerPointでのドキュメント管理からGitによる文書管理へ
サーバはコンテナを動かす単なるリソースとなり、「ペットから家畜へ」という思考の転換へ
これまでのキャリアで得た知識を一度捨て、リスキリングを行う必要がありました。また、私はこの会社で初めてSREチームに所属し、SREという職種の仕事内容を知りました。
【SREという役割について】
SRE(Site Reliability Engineering)とは、Googleが提唱したシステム管理とサービス運用に対するアプローチです。サイトやサービスの信頼性向上を担い、そのためにインフラの構成だけでなく、日々の運用業務や開発業務に対しても改善を行います。自動化できる作業は可能な限り自動化し、人間の手で行う作業や定型作業(いわゆるトイル)を削減し、エンジニアにとっても、サービスを利用するユーザに対してもより良い環境を提供することが目的です。
私はこのSREという仕事を知れば知るほど素晴らしいと思い、自分もSREのエンジニアとしてサービス向上に取り組みたい、と思うようになりました。
その後、担当したプロジェクトはなんとか無事に完了し、次にアサインされたプロジェクトでもAWSを使用したDXサービスの構築をチームで行い、気がつけばクラウドにも大分馴染んできました。
チームリーダーからインフラチームのマネージャーとなり、部下の育成やマネジメントも経験しました。
技術職のマネージャーは、QCDの管理、チームの管理、他チームや顧客との折衝などのマネジメント業務のほか、「技術領域における最終的な判断」も役割に含まれてきます。構築しようとしているシステムに使用する技術選定、技術的負債の受け入れやその解消への対応、運用中のシステムに関する改善や障害対応など、様々な対応が求められます。
しかし、マネージャーになると会議や調整ごとに追われがちになり、その合間にチームメンバーとの1on1や目標設定、チームビルディングも考えていくので、なかなか技術に向き合うことができなくなります。
それがマネージャーの役割だと言われればその通りです。
また、チームのメンバーと一緒にチーム改善に取り組むことも大切です。
しかしエンジニア、特にインフラチームのマネージャーという立場であるならば、技術面における広い知識と、技術選定のバランス感覚が重要です。
長く運用していくシステムをどう作り、どう維持していくか、ITアーキテクトの側面も求められます。もちろんメンバーの知恵を借りることで補うことはできますし、そうしている管理職の人は多いと思います。
ただ、最終的に自分の選択を行うには、やはり自分も手を動かしたり、経験や知識の裏付けを持っている必要があると痛感しました。
技術的志向とSREへの思い、管理者としてのキャリア、これらを考える中で再び迷い始めていました。
【MNTSQとの出会い】
前職でマネージャーとしてのキャリアを積み上げるという選択肢も十分にありました。年齢も40代となり、転職へのハードルも段々厳しくなります。
そこでまずは情報収集から始めました。
これまでの転職もそうでしたが、転職エージェントのサービスに登録し、履歴書・職務経歴書をメンテナンスして、エージェントの方に相談しました。
私の中での軸は以下の通りです。
自社プロダクトを持っており、その製品が魅力的である
SREチームもしくはメンバーがおり、その活動が社内で浸透している
システム運用を自社で行なっている
会社の文化に共感できる
適度なワークライフバランスが保てる
自社プロダクト、自社運用にこだわったのは、SREという仕事の特性上、SIerのように受託開発では難しいと思ったためです。
こういった条件で候補の会社を出していただき、気になった会社についてカジュアル面談を受けました。
その中の1社がMNTSQでした。
リーガルテックという分野はあまり馴染みがありませんでしたが、私も案件対応で他社と業務委託の契約締結をする際、契約書の雛形から契約内容を作るところから始まり、法務担当の方にレビューしていただき、先方に送付、その後先方の法務から修正依頼が届き、再度修正…と非常に時間がかかるやり取りであったことを覚えています。
契約が締結されないと業務を始められないので、スケジュール調整に苦労したことや、日々こうした契約書のレビューを行なっている法務の方の苦労の一端を知りました。
そういった背景もあり、代表板谷の「すべての合意をフェアにする」という理念、そしてそれを実現するためのMNTSQ CLM(Contract Lifecycle Management)というプロダクトはとても良いなと思いました。
この時点では複数の候補のうちの1つだったのですが、具体的に選考を進めていくうちに、この会社しか無いと思うようになりました。
役員面接に進んだ時に自分の志向を伝え、それに共感してもらえたことが大きな転換でした。
技術者のチームをどう作っていきたいかという組織の話。職種はあるものの、領域横断で業務を進めていく柔軟性。多様なバックグラウンドを持つ、優秀な方々と一緒に働くこと。スタートアップ特有の変化の速さ。そしてSREの重要性。特にSREは会社、役員レベルの方がその活動を認知していないと、机上の空論だけで終わってしまいます。
ここでなら、自分が貢献でき、自身も成長することができると感じました。
最後に代表板谷との面接で会社の理念、そしてプロダクトについて熱い想いを聞き、私はこの会社で働きたいと思ったのでした。
他にも選考を進めている会社はありましたが、内定時に受け取ったオファーレターに書かれた「期待する役割」、「MNTSQが提供できるもの」、「Valueについて」、これらを読んだときに、自分が考えている転職軸のほぼ全てに一致すると感じました。
MNTSQのValueについては、以下の記事をご覧下さい。
ここまでオープンで、ドキュメントにこだわり、その文化を維持しようとする会社は他にありませんでした。
他の選考を進めてから1社を選ぶというのが転職においては一般的だと思いますが、これまでの面接を通じて、これは縁だなと思い、他の選考を辞退し、MNTSQに決めました。
【技術職と管理職】
私のように現場から離れて管理職をしていると、転職時も必然的に管理職の枠が多くなります。技術職に戻りたいと思っても、即戦力を求められる所ではミスマッチで不採用になります。また、技術一辺倒ではないにせよ、プレイングマネージャーのような動きが求められます。
一度SREのエンジニアに戻り、何年か後に再び管理職に戻る。
技術的に尖ったスキルもなく、管理職としてのキャリアも深いとは言えない経歴で、そんな転職ができるのか?という不安もありました。
管理職といっても、実際にはいくつかのパスがあります。EM(エンジニアリングマネージャー)、Pdm(プロダクトマネージャー)、PM(プロジェクトマネージャー)など。これらを兼任することもあれば、プロジェクトによって一時的に役割を持つこともあります。
また、技術を突き詰めていくテックリードやIC(Individual Contributor)というキャリアも会社によっては用意されています。
多くの場合、管理職というものはキャリアアップの選択肢になっていると思います。ただ、具体的にどんなことを行うのか?ということについては明確でない部分もあるのではないでしょうか?
もちろん、「管理業務を行う」という大前提はありますが、私は「チームのメンバーが活き活きと働ける環境を作る」ことが何より大事だと考えています。
MNTSQで私は5人目のSREメンバーです。うち1名は現在CRE(Customer Reliability Engineering )になっているため、SREチームとしては4名です。私の前に入社した2名も、それぞれ4月と7月に入社したばかりで、これからチームとして立ち上げていこうというタイミングです。
私はMNTSQで「SREエンジニア」と、「SREチームのチームビルディング」という2つの軸を育てていきたいと思います。
【おわりに】
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
技術職と管理職の境目にいるような人間がどんなキャリアに進むべきか、エンジニアチームのマネージャーには何が必要なのか、その一助となりましたら幸いです。
今いる会社の中で自分のキャリアを積んで行けるなら、それが理想だと思います。自分の道が見えない、あるいは進むべき道がない時、環境を変えると言う選択肢もある、そしてそれは何歳であってもチャレンジして良いのではないでしょうか。
最近は選考を含まないカジュアル面談を行う会社も増えているため、他の会社のことを知るきっかけとして、気になる会社があれば受けてみてはいかがでしょうか?
もちろん、弊社もカジュアル面談を随時実施しております。
本記事を通じて、MNTSQに少しでも興味を持って頂けましたら、幸いです。
2023年9月現在、MNTSQではSREの募集はしておりませんが、CREの募集をしております。CREの仕事内容についてはこちらの記事でご紹介しています。